今回は、眼科コラム「流行性角結膜炎(はやり目)」についてお話しします。
流行性角結膜炎とは、アデノウイルスが原因で発症するウイルス性結膜炎です。 はやり目と呼ばれることもあり、非常に感染力が強く、保育園や幼稚園、病院や家庭内で流行することもしばしばあります。
流行時期は8月を中心として夏の時期が多いですが、1年中、感染する可能性はあります。感染力が強いため、周囲に感染を拡大させないために予防策が大切です。
Epidemic Keratoconjunctivitis
今回は、眼科コラム「流行性角結膜炎(はやり目)」についてお話しします。
流行性角結膜炎とは、アデノウイルスが原因で発症するウイルス性結膜炎です。 はやり目と呼ばれることもあり、非常に感染力が強く、保育園や幼稚園、病院や家庭内で流行することもしばしばあります。
流行時期は8月を中心として夏の時期が多いですが、1年中、感染する可能性はあります。感染力が強いため、周囲に感染を拡大させないために予防策が大切です。
アデノウイルスの感染を原因として発症します。アデノウイルスには、数多くの種類が存在しており、そのなかでも、8・19・37・4型といったタイプのものが、流行性角結膜炎を引き起こす原因となります。3・4型のタイプのものは咽頭結膜熱(プール熱)の原因となります。
流行性角結膜炎は、アデノウイルスが付着したものに触れた手で目を触ったり、汚染されたものを眼に触れさせたりすることから感染します。たとえば、ウイルスに汚染されたティッシュ、タオル、洗面器などに触れることなどが原因となる可能性があります。結膜炎の人が周りにいなくても、トイレのドアノブや、電車のつり革、手すりなどを介して感染することもあります。
アデノウイルスに感染してから、およそ1〜2週間の潜伏期間を経てから角膜と結膜に炎症症状が現れます。具体的には、眼の充血や目やに、ゴロゴロした眼の痛み、まぶたの腫れ、涙などがあります。目やには朝、目が開かないくらい大量に出ることがあります。はじめは片眼の症状であっても、時間経過と共にもう片方の眼にも症状が現れることがあります。
角膜に炎症が生じた場合は、角膜にびらんや混濁を生じることがあります。角膜は、光を透過させ網膜に焦点が合うように光を伝達するという重要な役割を担っています。そのため、角膜性病変が強くなると、網膜への光の透過性が低下することになり、まぶしさや見えにくさを感じるようになります。
そのほかにも、リンパ節(特に耳の前に存在する耳前リンパ節)の腫脹がみられることもあります。
流行性角結膜炎は、周囲の流行状況や眼の所見、耳前リンパ節腫脹の所見などをもとにして診断をおこなっていきます。結膜から得られる拭い液を用いてウイルスの存在を確認する迅速診断キットも使用することが可能です。迅速診断キットの検査で陽性であれば確定診断ができますが、陰性であっても感染を完全に否定することはできません。
残念ながら、原因であるアデノウイルスには、特効薬が存在しません。そのため、目やにや眼の充血などの眼の症状に対しての対症療法が治療の中心になります。
流行性角結膜炎で使用される点眼薬としては、炎症を抑えるために、抗炎症剤や低濃度ステロイド剤などがあります。細菌の混合感染を予防するために、抗菌剤の点眼も行われます。
体の免疫力を高めるために、安静と十分な栄養、睡眠をとることも大切です。
症状は1~2週間で治まってくることがほとんどですが、3週間以上症状が続く場合もあるため、感染には十分注意が必要です。
また後遺症として、いったん結膜炎の症状が軽減した後、角膜に濁りが残る場合があり、視力に影響を及ぼすことがあります。濁りを取るためには、抗炎症作用の点眼薬を使用しますが、状態によっては治るまでに数ヶ月から1年以上かかる場合がありますので、症状がなくなったからといって途中で通院をやめないようにしてください。
流行性角結膜炎の管理においては、感染拡大を予防することも重要です。アデノウイルスは感染力がとても強く、容易に周囲へと感染が拡大します。幼稚園や保育園、学校などの不特定多数の人と機会の多い環境下においては、より一層の注意が必要になります。
具体的にできる予防策として、アルコールや次亜塩素酸を使用して汚染されている環境を消毒することが考えられます。たとえば、ドアノブを拭いたり、汚染されたタオルを消毒したりするなどです。また、こまめな手洗いや手指消毒も重要です。
家庭内では、感染者とタオルを共有しない、箸をわける、感染者の入浴は最後にする、などの対策が考えられます。
流行性角結膜炎は、医師が周囲への感染力がなくなったと判断するまで登園や登校を控える必要があります。医師の指示に従って周囲への感染を防げるように注意しましょう。